それでも私は歌いつづけた

アルゼンチンを代表する女性歌手メルセデス・ソーサ(1935-2009)のCD「それでも私は歌いつづけたー検閲歌と未収録曲集」

Y Segui Cantando: Canciones Censuradas E Ineditas

Y Segui Cantando: Canciones Censuradas E Ineditas

 

1977-1980年のあいだにアルゼンチンで発売されたLPから検閲にあい削除されたものと、1969年から77年のあいだにシングル、EPなどの形で発表され、LPに収録されなかった曲の15曲を収録したCD。

軍政下(1976-83年)に禁止されていたアルゼンチンの作詞・作曲家による歌のほか、チリのビクトル・ハラ、ブラジルのミルトン・ナシメントとシコ・ブアルキ、キューバシルビオ・ロドリゲスの歌などが並ぶ。自分では作詞・作曲は行っていないひとだが、選んだ曲をみると彼女の歌うことへの姿勢は明確だ。

ソーサは1979年の2月に亡命し、1982年までアルゼンチン国内でコンサートを行うことはなかった。もともとアルゼンチンの農村でうまれたフォルクローレの歌手としてデビューしたひとだが、1982年以降はジャンルを問わない音楽家たちとの共演が目立って増えた印象がある。このCDにも国境やジャンルの垣根を飛び越えていく指向が反映されていると思う。

タイトルにある「それでも私は歌いつづけた」は、アルゼンチンの詩人マリア・エレナ・ウォルシュ作詞・作曲の「Como la cigarra(セミのように)」の一節。

もうすぐ開催。宇野千代展

いよいよ来週から

宇野千代展@神奈川近代文学館

www.kanabun.or.jp

とっても楽しみ。

昭和11年にファッション雑誌を創刊したという宇野千代さん。実際にお会いしたことのない私でも、お年を召してからの着物姿が印象に残っているけど、上記のサイト掲載のお若いころの写真は水の滴るようないい女でいらっしゃる。

 

ワン・ロード展への旅

4月後半の釧路は小雪がちらつく寒さでした。

数か月前から楽しみにしていた、釧路市立美術館で開催中のアボリジニ・アート展のために行ったのですが、(たまたまその分だけのマイレージがたまっていたのは偶然なのか?)道東はまだフキノトウが道端のそこここに顔を出す早春でした。

かつてアイヌの土地だった北海道で、オーストラリアの先住民のアートを観る。アルゼンチンの先住民の歴史に関心を抱き続けていた私にとっては、特別な意味をもつことのように感じられたのでした。

「ワン・ロード」と題されたこの展示は、主要な家畜である牛を追っていくためにオーストラリア西部で白人が開発したルートを、そのために追い立てられたアボリジナルの人たちが100年近くのちに訪れてキャンプして生まれたアートの展示会でした。

とはいえ、怒りや憎しみ、嘆きが会場にあふれていたわけではなく、神話にもとづいた作品あり、白人のおかげで命拾いしたヘリコプター(という名前。ヘリコプターで病院に運んでもらったことから。笑)さんの作品ありと、多様な視点に満ちた絵画でみたされており、恐ろしくもユーモラスな映像作品の上映など、来場者を解説と展示の前に足止めし、根が生えたように立ち尽くさせるものでした。

アボリジナルと主流社会との葛藤という、重い歴史については、神戸大学の窪田幸子さんという文化人類学者の方が講演のなかで語ってくださり、またその人たちのアートがどのような動機で生み出されるのか、アートの育成・普及に政府がどうかかわってきたのかなどについても十分に語ってくださった。後半では、アイヌ民族の歴史を研究している方との対談もあり、日本とオーストラリアの先住民政策を対比した視点からのお話もうかがうことができた。

 

そんな話をうかがってから訪れた釧路の博物館では、アイヌ民族の暮らしを知ることのできる資料を拝見し、また街中の、漢字で表記されているものの聞きなれぬさまざまな地名に、土地の歴史への想像力を刺激されたのでした。

翌日は午後から晴れてきて、鉄道で札幌へ向かう車窓からは太平洋を群れて飛ぶ海鳥の姿や、野原の枯草?が太陽の熱でもうもうと蒸気を躍らせる風景や、昨夏の水害の爪痕にひたすらため息をついているうちに睡魔に襲われて札幌に到着。

北海道を訪れるのは二度目だったのですが、以前は、札幌を素通りしたので、友人に案内してもらって札幌らしさを満喫しました。釧路とはうってかわったきらびやかな都会、ブエノスアイレスやニューヨークを思い出すようなコロニアルな雰囲気に圧倒されながらも、食べるものは食べ(笑)、サルサ・バー(踊りはしませんでしたが)にもお邪魔させてもらった一夜でした。

 

www.canningstockrouteproject.com

 

今年の春

健康診断の結果を聞きに行ってきました。昭和な感じの木製の身長測定器のある個人病院です。

結果はすべて白。それはそうだ。心身の健康第一でストレス最小の働き方を選んできたのだから。しかし、これからもそういう働き方でいいのか、迷わないでもないこの頃。と、迷うようになれたのは心の重荷をひとつおろせたからだ。というわけでひときわうれしい春でもある。

バスだと10分ほどの道のりを、帰りは歩きで。すみれだけでも4種類ほど見ることができて幸せでした。×15ルーペを持参し忘れたのが唯一の後悔(笑)。

トリプル9

テレビの映画番組はかかさずチェックしていたガキ(笑)のころから、ひまさえあれば映画を観てしまうのですが、これはすごかったです…

 

トリプル9 裏切りのコード [DVD]

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 主演はケイシー・アフレック。アフレック、ってどこかで聞いた名前、と思ったらベン・アフレックの弟だそうです。でも、顔は前から知っていました。オーシャンズ・シリーズのメンバーで、第3作ではメキシコに行って工場労働者を扇動する役柄。

この映画ではアトランタの警官役です。ここでもスペイン語のできるところをちらっと見せてます。市内に住むヒスパニック系の集住地域のパトロールをしているシーンでした。

そのアフレック演ずる警官を殺害し、警察が動きをとめる10分間に、警備の厳しい国土安全保障省に保管されている品物を盗み出すというミッションが、いろんな偶然で思ってもいない方向に進んでいくというのが映画のクライマックスなのですが、そこにいたるまでの話がけっこう長い。

むしろ、現役警官も参加するギャング・グループがそこまでの主役で、そのリーダー(キウェテル・イジョフォー)が悪の道に入るきっかけが残酷です。

ケイト・ウィンスレットが別人のように凄味のあるマフィアの女ボス役で登場するところも見もの。女性たちもいろいろな事情を抱えた人たちが登場していて、けっこう見ごたえがありました。(まあ、正視に堪えないシーンも多かったので、感受性の強い人にはおすすめできない。)

 

 

美しい「女」たち

 

リリーのすべて』という映画を観て考えさせられた。実在したデンマークの”女性”とその妻が主役の映画。20世紀初頭、ひょんなことから女装して妻の絵のモデルをつとめた夫が、もともと心に秘めていた女性として生きたいという願望を発見し、性転換手術を受ける。それを支える”妻”の愛情の強さは感動的だった。

フランス映画『彼は秘密の女ともだち』は、英国のミステリ作家ルース・レンデルの短編にヒントを得たそうだけれど、小さな娘をのこして妻に先立たれた夫が、女装しているときが一番自分らしくいられることに気づいて葛藤する物語。妻の親友は、いつのまにか女装した彼にひかれている自分に気づいて混乱する。最後は幸せそうな彼らの姿で終わるのだが…

 

 

そして、ちょっと古いけど『ハイヒール』(1991)。上記2作と違う点は、ここでは女装は、潜入捜査という名目で行われているところ。女装する検事(!)を演じているのは、スペインの人気歌手ミゲル・ボセ。ただし彼は完全な脇役で、主役は一組の母娘。この母親がひたすら自分のキャリアを優先するため、娘は母の愛を渇望して苦しみ、ついには自分の人生まで壊しそうになる。

f:id:rosita:20170116221403j:plainCongaroviaから

右がボセ。左は監督のペドロ・アルモドバル

 

私には異性装やその心理について専門的なことは知らないが、身体まで変えたいのか、外見を変えたいのか、いろいろなパターンがあるということはなんとなくわかるようになってきた。

とはいえ、この美しき男優たちの姿を見て一番に感じるのは、「敗北感」ーというより、もうちょっと乾いた「かなわねえな」という感情ーだ。子どものころから「女らしい」身なりやふるまいというものを親から強要されることなく育ってきたので、それをより強く感じるのかもしれない。

一方、女性が男装して生きることを選択する物語というのもあるらしい。ただ、こちらのほうはかなり重い話が多いようで、レンタルショップなどでも見かけられないのだが、いずれ観てみたいと思っている。 

 

 

 

 

チロエの子どものお話

チリ南部のチロエ島に住む先住民族ウイジチェ人の男の子が主人公のアニメ。チリのnovasurという教育系の公共チャンネルが作成していて、ほかにも北部のアイマラ人、南部のマプチェ人、ラパヌイ(イースター島)の男の子、女の子が主人公のものがあります。(”Pichintún"シリーズ)

短い時間のなかで、子どもたちの生活、社会の特徴、神話までよく紹介しています。言語はスペイン語ですが、絵がかわいらしいので言葉がよくわからなくても楽しめると思います。

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