ワン・ロード展への旅

4月後半の釧路は小雪がちらつく寒さでした。

数か月前から楽しみにしていた、釧路市立美術館で開催中のアボリジニ・アート展のために行ったのですが、(たまたまその分だけのマイレージがたまっていたのは偶然なのか?)道東はまだフキノトウが道端のそこここに顔を出す早春でした。

かつてアイヌの土地だった北海道で、オーストラリアの先住民のアートを観る。アルゼンチンの先住民の歴史に関心を抱き続けていた私にとっては、特別な意味をもつことのように感じられたのでした。

「ワン・ロード」と題されたこの展示は、主要な家畜である牛を追っていくためにオーストラリア西部で白人が開発したルートを、そのために追い立てられたアボリジナルの人たちが100年近くのちに訪れてキャンプして生まれたアートの展示会でした。

とはいえ、怒りや憎しみ、嘆きが会場にあふれていたわけではなく、神話にもとづいた作品あり、白人のおかげで命拾いしたヘリコプター(という名前。ヘリコプターで病院に運んでもらったことから。笑)さんの作品ありと、多様な視点に満ちた絵画でみたされており、恐ろしくもユーモラスな映像作品の上映など、来場者を解説と展示の前に足止めし、根が生えたように立ち尽くさせるものでした。

アボリジナルと主流社会との葛藤という、重い歴史については、神戸大学の窪田幸子さんという文化人類学者の方が講演のなかで語ってくださり、またその人たちのアートがどのような動機で生み出されるのか、アートの育成・普及に政府がどうかかわってきたのかなどについても十分に語ってくださった。後半では、アイヌ民族の歴史を研究している方との対談もあり、日本とオーストラリアの先住民政策を対比した視点からのお話もうかがうことができた。

 

そんな話をうかがってから訪れた釧路の博物館では、アイヌ民族の暮らしを知ることのできる資料を拝見し、また街中の、漢字で表記されているものの聞きなれぬさまざまな地名に、土地の歴史への想像力を刺激されたのでした。

翌日は午後から晴れてきて、鉄道で札幌へ向かう車窓からは太平洋を群れて飛ぶ海鳥の姿や、野原の枯草?が太陽の熱でもうもうと蒸気を躍らせる風景や、昨夏の水害の爪痕にひたすらため息をついているうちに睡魔に襲われて札幌に到着。

北海道を訪れるのは二度目だったのですが、以前は、札幌を素通りしたので、友人に案内してもらって札幌らしさを満喫しました。釧路とはうってかわったきらびやかな都会、ブエノスアイレスやニューヨークを思い出すようなコロニアルな雰囲気に圧倒されながらも、食べるものは食べ(笑)、サルサ・バー(踊りはしませんでしたが)にもお邪魔させてもらった一夜でした。

 

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