美しい「女」たち

 

リリーのすべて』という映画を観て考えさせられた。実在したデンマークの”女性”とその妻が主役の映画。20世紀初頭、ひょんなことから女装して妻の絵のモデルをつとめた夫が、もともと心に秘めていた女性として生きたいという願望を発見し、性転換手術を受ける。それを支える”妻”の愛情の強さは感動的だった。

フランス映画『彼は秘密の女ともだち』は、英国のミステリ作家ルース・レンデルの短編にヒントを得たそうだけれど、小さな娘をのこして妻に先立たれた夫が、女装しているときが一番自分らしくいられることに気づいて葛藤する物語。妻の親友は、いつのまにか女装した彼にひかれている自分に気づいて混乱する。最後は幸せそうな彼らの姿で終わるのだが…

 

 

そして、ちょっと古いけど『ハイヒール』(1991)。上記2作と違う点は、ここでは女装は、潜入捜査という名目で行われているところ。女装する検事(!)を演じているのは、スペインの人気歌手ミゲル・ボセ。ただし彼は完全な脇役で、主役は一組の母娘。この母親がひたすら自分のキャリアを優先するため、娘は母の愛を渇望して苦しみ、ついには自分の人生まで壊しそうになる。

f:id:rosita:20170116221403j:plainCongaroviaから

右がボセ。左は監督のペドロ・アルモドバル

 

私には異性装やその心理について専門的なことは知らないが、身体まで変えたいのか、外見を変えたいのか、いろいろなパターンがあるということはなんとなくわかるようになってきた。

とはいえ、この美しき男優たちの姿を見て一番に感じるのは、「敗北感」ーというより、もうちょっと乾いた「かなわねえな」という感情ーだ。子どものころから「女らしい」身なりやふるまいというものを親から強要されることなく育ってきたので、それをより強く感じるのかもしれない。

一方、女性が男装して生きることを選択する物語というのもあるらしい。ただ、こちらのほうはかなり重い話が多いようで、レンタルショップなどでも見かけられないのだが、いずれ観てみたいと思っている。