本と映画

前にも、映画と読書のつながりについて書いたのですが、すでにある小説を映像化した作品は、本へ私たちを導いてくれるものでもあります。『ゲド戦記』の作者が、映画はまったく別の作品だと考えている、と語ったそう(私も同感)ですが、まったく別の何かであれ、それが新しい読者を連れてくることはあるでしょう。

 

最近見た「読書」がテーマの映画、『ガーンジー島の読書会の秘密』。

 

ガーンジー島の読書会の秘密 [DVD]

ガーンジー島の読書会の秘密 [DVD]

  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: DVD
 

 主演の女優は、映画『マンマ・ミーア』の続編で、若い日の主人公を演じたリリー・ジェームズ。『シンデレラ』にも出演していた、ピカピカの美人さんです。この表現にはちょっと悪意があるかもしれませんが、どうも宣伝される映画のイメージと合わない感じがしていたのです。でも、映画を観て納得しました。

第二次大戦後のロンドンで、売れっ子作家としてちやほやされ、アメリカ合衆国のエリート軍人らしきマークと付き合って結婚間近な若い女性というのが彼女の役柄。そんな彼女の元へ、初めて名前をきくようなイギリス海峡の島[イギリス王室属領]で豚を飼う農家の男性から手紙が届くのです。Facebookもズームもない時代、その手紙に書かれていた、ナチス占領下で開かれていた読書会に興味をかきたてられたジュリエットが、顔も知らない人たちに会うためにガーンジー島を訪れるところから物語が始まるのです。

一見まばゆい光のなかにいるジュリエットが、自分の居場所を見つける物語、というとほとんど結末もわかってしまいそうですが、単なるメロドラマではない、とは申し上げておきましょう。映画は、登場人物の背景があまり書き込まれていない余白の多いものだったのでーそういうところも好きだけどー、原作を読んでみたいと思いました。

 

もう一作は、軽いタッチだけど、そこに出てくる小説を読みたくなるという点で、気に入った『ジェイン・オースティンの読書会』。

 

 とくに秘密もなく、平和な時代のお話ですが、生きていればいろいろあるわけで、そういう女性たちが集まって、ジェーン・オースティンの作品ばかりを読む読書会の物語です。つくづく英語圏の女性たちに愛されているのだなあと思います。オースティンの作品自体何度も繰り返し映画化されていますし、かつて大ヒットした『ブリジット・ジョーンズの日記』も『高慢と偏見』をリスペクトした作品といわれるぐらい、英語圏の人たちの意識に根付いているらしい。

 

エマ (字幕版)

エマ (字幕版)

  • 発売日: 2016/11/01
  • メディア: Prime Video
 

 

この『エマ』、映画の方はまだ観てないけど、オースティンの作品のなかで一番いらっとくるヒロインではなかろうか。「読書会」は、そのエマっぽい女子(笑)が主人公の映画になります。ご都合主義なところも目立つけど、SFの作家にじつは女性が多いとか、

 「オースティンは人生の解毒剤」(うろ覚え)など、はた、とひざを打ちたくなるセリフがちりばめられているので、休日にでもほろ酔い気分でみて、幸せな気分で寝付くにはおあつらえ向きな作品だと思います。