ハナカイドウの下で

鎌倉・円覚寺へ行きました。目的はお墓詣り。

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作家の中里恒子(1909-1987)さんのお墓です。ピンク色の花が一輪挿しでお供えされており、彼女のお人柄をしのばされました。

生きた人間のわがままさで、花盛りのハナカイドウの木の下、心の中で中里さんとお話をさせていただきました。

神奈川県は日本のなかでも多文化教育や、外国につながる人たちへの支援が進んでいる土地だと思うのですが、中里恒子さんは昭和の初めにふたりも西欧人の姻戚が身内にいるという状況で、身近なところでの異文化との出会いや、横浜という土地での日本と異国の男女の関係性(国際結婚はそのひとつの類型ですが)をテーマとしてとりあげていた方です。その代表作としては『乗合馬車』(1939年第8回芥川賞受賞)をあげることができます。(いまは下記のような全集、もしくは彼女の作品集で読むことができる)

昭和文学全集 第19巻: 中里恒子 芝木好子 大原富枝 河野多恵子 大庭みな子 (昭和文学全集 19)

彼女の作品のなかで、もっともよく知られているのは、映画化もされた『時雨の記』。

新装版 時雨の記 (文春文庫)

 

まだほんの一部ですが、彼女の作品を読んでいると、グサッと胸をさされるような描写がときどきあって、するどい視点を秘めていた方なのだろうなと思うのです。これからも読み続けていきたい、作家のおひとりです。