紙の小鳥

 クーデターや軍事独裁政権下のさまざまな経験というのは、映画や物語の題材としてよく取り上げられもするし、語り伝えていかなければいけないことだと思う。とはいえ、作品としてどう仕上げるかは作り手の個性があらわれるし、観客側の好みもわかれる点だ。

 昨年、映画館で上映されたときに見そびれた『ペーパーバード』(原題は"Pájaros de papel" 2010年)ペーパーバード 幸せは翼にのって [DVD]
 スペインの有名な芸能一家の出身で、キューバ生まれのエミリオ・アラゴン監督が描く、旅回りの喜劇一座が生きる内戦後のスペインでのお話。子役が最高だし、さりげないしぐさやセリフで観客の想像力を喚起するやり方がとてもいいと思った。イマノル・アリアスは、かつてアルゼンチン映画『カミラ』で、恋のためにすべてを失う神父役を演じた俳優(ついでに『私の秘密の花』asin:B00018GZ14に出てくるヒロインの最低夫役も。)だが、すっかり貫録をつけて登場。ルイス・オマールは『バッド・エデュケーションasin:B000BH4C42で見たような気がする。主役の三人だけでなく、脇役もみなそれぞれ魅力的で123分を長いとは感じなかった。
 最後のほう、詳しくは書けないけど、紙の小鳥たちが飛び立つシーンで、こんなふうにいつか自分のこどもを守ることがあるのかと思ったが、どうかただの感傷で終わりますように。