映画『スポットライト』

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俳優と、映画でかれらが演じた記者本人を並べてみせている「ボストン・グローブ」の宣伝記事です。全力で映画の宣伝してますね、当然か…(笑)

映画はこちらです。

スポットライト 世紀のスクープ[DVD]

2001年、ボストンの有力紙「グローブ」に、新しい局長がやってきます。局長はユダヤ人で、神父が児童に性虐待を行ったというコラムに目をとめ、もっと深く探るように指示をします。

「スポットライト」はコラムのタイトルで、4人の記者たちがチームを組んでひとつのテーマを掘り下げ、一年間連載をつづけるというもの。なので、大半は記者たちが取材をするシーンという”地味”な映画なのですが、なんといってもネタが大きい。相手はカトリック教会というシステムなので…

私はご縁がありませんでしたが、ずっとカトリックの学校で教育を受けてきた友人が、昔、お酒の席で「修道院のとなりには孤児院があってね… そこに入っている子どもは神父さんのおとしだねといううわさもある…」という話をしてくれたことがありました。

お寺の坊さんも神主もほとんどが結婚している日本文化のなかで育った私としては、その話をきいてもあまりびっくりしなかったのですが、この映画の主題は「神父が信徒の子どもに性暴力をふるっていることを教会が組織ぐるみで隠ぺいしていること(を暴く記者たちの活躍を描く)」ことなのです。しかも、映画のなかで明かされる事実ですが、神父の6パーセントが虐待を行っている、と。これにはスクリーンのなかの記者たち同様、言葉を失いました。地道な取材の結果、70人の神父の悪行と生きのびた被害者の苦しみがつぎつぎに報道されていきます。

この記事が出たのが2002年で、それはボストンだけの動きにとどまらず、世界各地で真実が明るみにさらされます。映画のエンドロールでは、子どもへの性虐待が明らかになった教会のある街の名が流れていくのですが、米国だけではなくアジア、ラテンアメリカ、アフリカと、とても広範囲にわたっているのがわかります。

この映画の長所は、この問題は昔からあったにもかかわらず、正面から取り組もうとしたジャーナリストが(自らもふくめ)いなかった、被害者はもしかしたら自分だったかもしれないと、自分の問題として取り組む記者の存在を描いたところにあると思います。たんに主人公たちを、勇気ある英雄として描くだけではない姿勢が、観る者の心も揺り動かすのかもしれません。

 

カトリック教会と児童虐待の問題を扱っている映画としては、ほかにこんなものもあります。いずれもフィクションではありますが、世間の無関心に対して、注意を喚起しようとした面はあると思います。

真実の行方 [DVD]

エドワード・ノートンの怪演がみもの。

 

バッド・エデュケーション [DVD]

スペインのペドロ・アルモドバル監督作品。カトリックの学校に通ったとおぼしき男性たちが主役で、そのひとりはアルモドバル自身を連想させる映画監督です。

 

さいごに。『スポットライト』にもちらっと自分自身がサバイバーであり加害者だという神父が出てくるのですが、人の行動の契機となる心の問題の解決のむつかしさと、希望も教えてくれる本を一冊最後に紹介しておきます。

ライファーズ  罪に向きあう