Tengo una pena que es pena


そんなすごいアーティストの系列にいるアルゼンチン、サルタ州アンガスタコのコプレラ、Julia Vilte。厳しい生活のなかで、彼女の心を唯一解放してくれるのが、コプラを歌うとき。太鼓をたたきながら、スペイン語の四行詩を語るように歌う。その詩は、彼女が子ども時代から聞き覚えた伝承詩のなかから、そのときの自分の心情に合うものを選んだり、あるいは即興で作ったり。

アルゼンチン北西部の厳しくも美しい自然のなかで、コロンブス到達以前からの伝統を大切にしながら暮らす彼女たちの生活と貧困からくる悩み、歌を描いた短編映画がある。"Tengo una pena que es pena"(penaとは苦労、悩み、つらさ):私には悩みがある、つらい悩みが(これも歌の文句)

フリアの生活は一見牧歌的だけれど、そこには私たちの生活からは想像できないような貧困があり、そのつらさをやわらげるのが彼女にとっての歌。けれどそればかりではときほぐせない悩みに、とうとう彼女は町のカウンセラーに相談をする…

アンデスの雪解け水の音、山羊の声、鳥のさえずり、なにより圧巻はカーハと呼ばれる太鼓をたたきながらのフリアたちの歌。その響きには心をゆさぶられます。

監督はLorena Garcia、2006年(30分)