文集作り

先日の芝居のなかで文集を作るシーンがあって、懐かしく思い出したことがあった。

受験勉強にあけくれていたはずの高校時代なのに、手元には古いサークルの文集が残っている。印刷されてはいるものの、原稿は手書きだ。当時はワープロもまだそれほど普及しておらず、「ファックス原紙」なるものに手書きで書いて、それを印刷していた。

舞台の上、昭和二十年代はまだファックス原紙プラス印刷機ではなく、謄写版の時代。一枚づつローラーを転がしてインクをのばし、刷っていく。これも見覚えがある… 昭和五十年代の初めだっただろうか? 母が家で同人誌を刷っていたのだ。

刷ったあとのやり方は三十年間変わらなかったようだ。何枚か重ねて軽く折り目をつけたあと、一枚づつ重ねてきっちりと折り目をつけ、ページ順に並べて重ねて綴じる。こんなふうに手を動かしながら、あの頃何を話していたんだろう? いまでも当時の仲間と会うと、話はつきない。

物を書くことは、自分を省みる行為だし、知的な営みだともいえる。だが… 三人の仲間を私達はうしなった。皆二十代で逝ってしまった。鈍感な私は、まだなんとか生き延びているけれど。